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2019年見た映画

2020年も割と過ぎたけど、2019年に見た映画のことを書きたいと思う。

2019年に見たなかで印象的な映画を10本。

(過去にブログに書いたものは除く・順番は鑑賞した日付順)

 

  1. 「叫びとささやき」
  2. 「ローマ/ROMA」
  3. 「幸福なラザロ」
  4. 「僕はイエス様が嫌い」
  5. 「晩春」
  6. 「永遠に僕のもの」
  7. イカとクジラ
  8. 去年マリエンバートで
  9. 「スケート・キッチン」
  10. 「私の20世紀」

 

「叫びとささやき」イングマール・ベルイマン

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新文芸坐にて鑑賞。

かくして叫びとささやきもまた沈黙に帰した

この言葉で結ばれるように、この映画の最後に残るのは沈黙、それも世界が閉じられたかのような沈黙だった。

赤が印象的に使われた、絵画のように荘厳な画面が素晴らしく、死者が蘇るシーンは異様に怖かった。

今年はベルイマンの「野いちご」も見たのだけど、死期の近づいた人間が自分の人生を振り返ったときに、幸福と不幸が常に両方あり、一方に感謝しつつもう一方を直視しなければならないということを痛感する。

「沈黙」というのはベルイマンのテーマの一つであると思っているけど、世界は(神は)何も言わず、ただ試練を与え、それに対して人間はいったい何ができるのだろうか、という深い問題を提示し、その手法が実験的かつ品と格があるところが好きだ。

 

「ローマ/ROMA」アルフォンソ・キュアロン

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Netflixで鑑賞。

モノクロなのに?だからこそ?すごく美しい映像でびっくりした。

砂、海、水、道路、木々、建物、すべてが粒子の細かい光の結晶みたいな感じ。

特別な撮影技術を使っているんだろうと思うけど。

特に横に長く映し出す長回しの時、その動きによって見る側の感情も動いてしまうような。

最後に感情が爆発してしまう場面、ポスターに使われている場面は号泣必至だった。

 

「幸福なラザロ」アリーチェ・ロルヴァケル

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Bunkamuraル・シネマで鑑賞。

イタリアの女優、アルバ・ロルヴァケルは憧れの女優のひとりだ。とても魅力的な俳優だと思う。

彼女の妹アリーチェ・ロルヴァケルは映画監督で、陽光と自然、街灯の無い本当の暗闇と月明かりの夜、田舎の生活と人々・動物、を巧みに描きイタリア映画のリアリズムの王道という気さえする。

「夏を行く人々」を見たときも思ったけど、幻想的なストーリーでふっとあっけなく終わってしまうため、見た後戸惑ってしまう。

「幸福なラザロ」には圧倒される何かがあった。何も求めず無私の心で動くラザロ、人々からばかと思われ、いいように使われるラザロ。聖書に登場するラザロに重ねて、映画の中で彼は「復活」し聖性を帯びる。

それに瞬時に気づけたのは、アルバ・ロルヴァケル演じる女性だけ。私の考えでは、それは人々を搾取していた地主の女性が、聖書の講釈めいたことを彼女に教えていたからだろう。その皮肉はなかなか面白い。

 

「僕はイエス様が嫌い」奥山大史

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日比谷シャンテで鑑賞。

とても面白い試みで構成された映画であり、上質な童話のような閉じた映画だった。

子供の世界、子供の視線といったものを本当に上手に繊細に描いている。

真っ白な一面の雪、ニワトリ、少年、そして最後のドローンによる撮影、あの場面の眩しさは映画を見る喜びの一つだと思った。

この監督の映画はまた見たい。

 

「晩春」小津安二郎

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DVDで鑑賞。

こういう映画は年間ではなく、オールタイムベストに入れるものだろうと思うけど。

原節子の異様な美しさとどこまでも徹底された画面の美しさ。 

正しいもの、美しいものしか相手にしなかったね、と弔辞に読まれた小津安二郎の映画は、原節子というどこまでも異物であるような稀有な存在感を持つ俳優を入れることによって、更なる境地を拓くのだな、といつも思う。

 

「永遠に僕のもの」ルイス・オルテガ

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去年見た中で唯一、2回映画館で見た映画。

「どうしてみんなおかしくならないんだろう?もっと自由に生きられるのに」

という台詞で始まるこの映画の主人公、カルリートスは自らを地上に降りてきた天使だという。

所有の概念がなく息をするように盗みを働き、罪悪感をかけらも感じることなく殺人を犯す。

冒頭柵を乗り越え地上に降りるカルリートスの姿は、野生の動物のように俊敏で無駄な動きがない。

映画が進む中で思うのは、彼の中で特殊なのは母親の存在であり、加えて友人への同性愛的な執着。こういうところはプロデュースしているペドロ・アルモドバルぽいなと。

彼はそれに依り感情を動かし涙を流す。

天使のような美しい顔、ブロンドのカールした髪、幼さの残る体つき、、演じるロレンソ・フェロがすごくぴったりだったな…

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夜中に強盗に押し入った宝石店でイヤリングをつけた自分を見つめ「若い頃のママに似てる」とつぶやいた時の潤んだ瞳が忘れられない。

音楽も歌謡曲調で熱がありアルゼンチン映画ぽくてよかった。

最初と最後のカルリートスのダンスのシーン、それに続くタイトルコールがとても好き。

結局、いわゆるサイコパスの話なので彼が何考えてるのかなんて分かりっこないのですが、それでも涙を流すカルリートスに悲しくなったり、見た後もずっと考えてしまったり、我々には不可能な何かがあることを鮮やかに示している映画なんだろうな。

 

イカとクジラノア・バームバック

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Netflixで鑑賞。

知的で都会的で情けない人間くささを描き、途中ちょっと退屈に感じたりするんだけど、終盤、主人公が母との思い出の地で「イカとクジラ」を見たときに不意をつかれた。何でかよく分からないけど、すごく感動したので、やはりノア・バームバックってすごいんだね。 

 

去年マリエンバートでアラン・レネ

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恵比寿ガーデンシネマで鑑賞。

これは芸術作品ですよね。

前衛的でかつハイレベルな芸術性を最初から最後まで維持している。

意味分からないんだけど、見ている間ずっとぞくぞくしていた。

 

「スケート・キッチン」クリスタル・モーゼル

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早稲田松竹で鑑賞。

出てくる女の子がすごくイカしてました。

 

「私の20世紀」イルディコー・エニェディ

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早稲田松竹で鑑賞。

ハンガリー映画。こういう映画を観られる機会は本当に貴重だと思う。

この映画、私はすごく好きでした。不思議で掴みどころがないのだけど、人が生きている時の世界のおかしさ、歴史、その中で懸命に生きる一人の人間、そういうものを軽やかにまっすぐ捉えていて、終わった時によい余韻がずっと残っていました。